過去に撮影した仕事の写真を、別のクライアントに見せられない。そんな場面がよくあります。
広告やカタログの仕事は、権利や契約の関係で、実績として提示できない場合が少なくありません。だから、作品撮りで見せられる実績を自分で作ります。
ポートレートと作品撮りの違いって?では一般的な概念を中心に書いていますが、この記事は、仕事として撮影を請け負っている方、目指している方に向けて書いています。次の作品撮りで、誰に何を見せるか。その決め方が分かります。
作品撮りは、腕前を見せる場ではない
たまに、芸術写真を作品撮りと呼ぶ話を耳にしますが、作品撮りの目的は、次の2つを証明することです。
- 「クライアントの商品(モデルを含む)を、これだけ素敵に撮れる」
- 「過去に、このような撮影をしてきた」
光や構図の美しさだけを見せる写真は、ほめられても、依頼にはつながりにくいのではないでしょうか。
クライアントが知りたいのは、「自分の商品が、この人の手でどう撮れるか」だからです。
過去の仕事の写真を使えないから「同じ状況」を作る
過去の仕事の写真は、クライアントの許可なく見せられないことが多くあります。 版権や契約上の使用範囲、守秘義務が関わるためです。
時々、『過去にどんな仕事したの?』と無遠慮な質問をする人物もいますが、コンプライアンスがうるさい現代において、おいそれと話題にすることは避けた方がいいでしょう。
過去の仕事を見せられない代わりに、同じような状況の写真を自分で撮り、クライアントに見せます。
たとえば、飲料の広告を撮りたいなら、飲料の広告と同じ状況を再現します。屋外で、モデルが飲み物を手に持つ場面です。
公開できない仕事は、同じ条件で撮り直す方法もあります。ライティング(光の当て方)やセッティング(機材や小道具の配置)を、撮影した写真に合わせます。
自分が再度撮り直した写真は、公開できます。
つまり作品撮りは、過去の仕事の再現。そして、これから受ける仕事のプレゼンテーションなのです。
この業界では、人の写真を平気で流用して、いかにも自分が撮影したように話す人物が少なくありません。仕事を得るために自分ができないことを虚偽報告することは避けた方がいいでしょう。
クライアントは宣材から何を読み取るのか
クライアントが宣材から読み取るのは、「自社の商品でも、同じように撮ってもらえそうか」です。
見られるポイントは、主に次の2点です。
- 自社の商品に近い状況が、再現されているか
- 商品や契約モデルが、魅力的に写っているか
1枚の美しさより、「この状況なら任せられる」と想像できるかどうか。それが、宣材の基準になります。
光や構図は宣材づくりの手段
光や構図は、宣材の目的から逆算して決める手段です。 技術の披露ではなく、宣材づくりのための道具。目的は、別にあります。
決める順番は、次のとおりです。
- 誰に見せるか(クライアント像)
- その人の商品を、どんな光で見せたいか
- その光を、どう作るか
上から順に決めると、光の選択に迷いにくくなります。
自分の場合、女性が被写体なので、いかに自然にきれいに見えるか調整するわけですが、具体的な撮影テクニックは社外秘のため、実際に撮影した人にのみ、口頭で説明しています。
この記事では、撮影技術ではなく、撮影の決め方の順番をお伝えします。
では、撮り方や光の研究は、どこで行うのでしょうか。
研究は、テストシュートで行います。
テストシュートは、機材のテストや、光・構図など撮り方の練習のための撮影です。テストシュートで試した結果から、作品撮りで使う手段を決めます。
宣材写真撮影の5つの手順
宣材写真の撮り方は、目的から決めて、環境・機材・写真を選びます。
- 見せたいクライアント像を決める
- そのクライアントが扱う商品と、状況を考える
- 状況を再現する(モデル、衣装、小物、場所)
- 撮影する
- 見せたい力が伝わる写真だけを選ぶ
たとえば、飲料メーカーに見せるなら、1は飲料メーカーの広告担当、2は缶飲料を屋外で手に持つ場面です。3では、近い見た目の缶、屋外の場所、モデルを用意します。
5では、「良い写真」ではなく、「使える写真」を選びます。判断材料は、次の3つです。
- 見せたい目的と合っているか
- 並べたときに、統一感があるか
- 印象に残るか
撮影前に決めておく8つのこと
撮影前に、写真の使い道を含めて、次の8点を関係者で共有します。
- 撮影の方向性(写真の使い道が要点)
- 日時、作業時間、場所(屋外やロケ地は、撮影の許可を確認)
- モデルのタイプ(かわいい系、キレイ系、カッコいい系)
- 当日の衣装(スタイリストがいる場合は不要)
- メイクの方向性(撮影場所・衣装と合わせる)
- 当日のライティングの方向性(写真の方向性を検討する材料)
- 写真の共有方法(サイズ、枚数。ネット公開なら1500×2000px程度、A4を300dpiで印刷するなら2480×3508px程度が目安)
- 必要経費の分け方
費用の分担と写真データの扱い
クライアントのいない作品撮りでは、写真を必要としている人が費用負担するのが基本です。
カメラマンだけが必要としている作品撮りなら、費用はカメラマンが負担します。
しかし、集まる人はプロ(志望)なことが多いので、撮影目的と利害が一致していれば、無償でも成り立ちます。
その場合、各自の分野の費用を、各自が負担する形が多く見られます。
スタジオ代はカメラマン、衣装と小物はモデル、メイクはメイク担当です。
スタイリストが入るときは、衣装と小物をスタイリストが負担します。一人だけ費用が高い・安い時は全員でワリカンにする場合もあります。
撮影した写真データは、参加者で共有するのが一般的です。
必要な写真は立場によって変わりますので、参加者全員向けに必要なカットを撮影してから、アレンジしていくことが多いです。
ただし、ギャランティ(報酬)を支払って専用に撮影した場合は、支払った人が権利を持つことが多くなります。共有する写真は、お互いに使われたくないものを除いて決めます。
作品撮り前のチェックリスト
- 見せたいクライアント像を、一言で言える
- 再現する商品と状況を、決めた
- 光の方向性を、目的から逆算して決めた
- 費用の負担者と、写真の使い道を確認した
- 撮影後に選ぶ基準を、決めた
作品撮りは、腕前の披露ではなく、2つの証明。光は、そのための手段にすぎません。研究はテストシュートで済ませ、作品撮りでは、クライアントに見せる宣材を、一緒に仕上げてみましょう。
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