モデルも衣装も決まったのに、背景だけがしっくりこない。作品撮りの企画で、そんな場面はないだろうか。
原因は、モデル・衣装・背景の三つが、同じ方向を向いていないことにあると思う。作品撮りは、見た人に「この人に撮ってもらいたい」と思ってもらうための写真。三つの向きがそろっていないと、何を撮りたい人なのかが伝わりにくい。
自分が作品撮りで大切にしているのは、二つある。撮りたいイメージを形にすること。そのモデルが次の仕事へ進むきっかけをつくること。無償の作品撮りという枠の中での話だが、この二つのために、特に力を入れているのは、準備と当日の空気づくり。衣装と背景を決める時間は、その準備の中心にある。
たとえば、艶のある赤いドレス。強い色なので、背景が地味だと、ドレスだけが浮いて見える。反対に、大理石の柱や金色の装飾が並ぶ重厚なカジノなら、赤は背景に負けない。ドレスの華やかさと、場所の格が、ちょうど釣り合う。

赤という色は、背景によって表情を変える。一般に、明るい背景では元気な印象になり、暗い背景では深みが出る。どちらが良いという話ではなく、撮りたいイメージに合うほうを選ぶ。暗めで金色の多いカジノなら、赤は、落ち着いた大人の色として見えると思う。
ただ、カジノは、実際には作品撮りで撮影できない。
それでも、考える価値はあると思う。撮影できない場所を思い浮かべると、「この衣装に、どんな空気を合わせたいのか」がはっきりしてくる。重厚で、少し暗く、金色が映える場所。そう言葉にできれば、現実のロケ地を探すときの基準になる。近い雰囲気の場所を、条件から探せるからだ。
衣装の色は、背景のどこと響き合うのか。衣装の格と、場所の格は釣り合っているか。この空気に、モデルの雰囲気は合うか。決める前に、この三つを自分に問いかけてみてほしい。
モデルとの相性も、同じ。赤いドレスとカジノには、落ち着いた大人の雰囲気を持つモデルが合う。可愛らしさが持ち味なら、別の背景を選んだほうがいい。衣装と背景が良くても、モデルの雰囲気が違えば、三つはそろわない。モデル自身が、その空気を気に入っているかも大切で、気に入っていれば、表情がやわらぐと思う。

もう一つ、裾が上がっているドレスの話をしたい。前が短く後ろが長いドレスや、スリットの入ったドレスは、美脚撮影に向いていると思う。立っているだけで、脚の線が自然に見えやすいからだ。脚を見せるために、不自然なポーズをつくらなくていい。歩く、立ち止まる、振り返る。動きに合わせて裾が揺れれば、脚の見え方にも変化が出る。スカート丈やシルエットは、脚の長さの印象に、大きく影響する。衣装が脚を見せてくれるなら、ポーズは、重心の置き方やつま先の向きに集中できる。
ただし、裾の上がり方は、カメラの位置で見え方が変わる。低すぎる位置から撮ると、脚が強調されすぎて、写真の品を損なう。モデルの経験が浅いときは、脚の出し方やカメラの高さを、数センチ単位で調整することもある。数センチで、脚のラインも、写真の印象も変わる。
赤いドレスと、カジノと、裾の上がったシルエット。三つがそろったとき、写真は「何を見せたい人なのか」を語りはじめる。そろえたからといって、いい写真になる保証はない。そろえるのは、当日、いい瞬間が生まれる余地を残すため。
赤いドレスを選んだら、まず背景から考えてみてはどうだろう。次は、どの場所に合わせてみようか。
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