クリップオンストロボの一歩進んだ使い方
公開日:2012.09.10
クリップオンストロボ(瞬間光)は扱いが難しいと感じているフォトグラファーも結構多いようですが、将来プロカメラマンを目指す場合や、スタジオや室内で自由にライティングを使いこなしたいと考えている場合は、最終的に(カメラもストロボも)マニュアル設定による撮影テクニックをマスターする必要があります。
本サイトは写真学校ではありませんので、ルールや撮り方を限定されることなく、女性ポートレートを撮る時にカメラマン本人が表現したいように光を当てる事が出来ればいいと考えています。
クリップオンストロボ初心者の方は、各段階をクリアすることで、自然とクリップオンストロボが使えるようになり、撮影の幅が広がり、色々な表現ができるようになりますので、少しづつ使える様になっていきましょう。
この記事の内容
クリップオンストロボについて
クリップオンストロボは、キセノン放電管による電子閃光(せんこう)を利用した写真用人工光源で、1939年アメリカのハロルド・エジャートンによって発明されました。
最近では一般的な名称になっていますが、ストロボという名称はもともとストロボ・リサーチ社の商品名のため、メーカーによってはスピード・ライト、エレクトロニック・フラッシュとも呼ばれています。
機能の面では各社ほぼ共通しており、カメラのホットシューに取り付けることで容易にカメラとの同期発光を可能にしています。
クリップオンストロボの一般的な使い方
最近のクリップオンストロボは、本体の大きさに比較して多くの機能を有しており、その使い分けの難しさが苦手意識につながっているようです。
最初の頃は、どんな被写体でも適正露出で撮影ができるようになることをおすすめします。
クリップオンストロボをオート設定で使う
クリップオンストロボを使う一番簡単な方法で、カメラをオート設定で撮るのと同じくらいカメラ任せで撮影ができますので、初心者にはおススメです。
若干(ストロボにより±2~3段)位の明るさ調整も可能ですので、もう少し明るく、暗くにも対応できます。
最近のカメラメーカーではTTL(CanonならE-TTL、Nikonならi-TTL、SonyならTTLと名前が若干異なる)対応になっていますので、お使いのクリップオンストロボがカメラメーカーと同じであれば問題はありませんが、異なるメーカーのものはオート設定では使えませんので注意が必要です。
(例えば、CanonのカメラにNikonのストロボではオート設定しても使えません。)
特にサードパーティーや中国製の安いストロボを買う時は、お使いのカメラメーカー・TTL対応のものを購入するようにしてください。
※マニュアル撮影をする場合は上記の限りではありません。
撮影時に気になるTTLの弱点
TTLは(簡単に言うと)カメラがオートフォーカスを合せている間に、周りの光の状況を測り、計算してストロボの出力光量を決めるシステムです。
つまり、撮影環境(明るさ)が変わらなくても、AFでピントを合わせる都度、光の状況を測り計算する分だけ撮影間隔が開き、(測定が終わっていないと)シャッターを好きなタイミングで押せません。(特に周りが暗くなると測定が遅い)
つまり、リズムよく撮影ができない事を意味します。
旅行や記念撮影、撮影時間が決まっていないポートレートなら若干の時間は気にしなくてもいいかもしれませんが、モデルをリズムよく撮るポートレートや、時間制限のある撮影会等で使うのは事実上難しいでしょう。
クリップオンストロボをマニュアル設定で使う
クリップオンストロボの光量を自分で決めて撮影ができるモードですので、撮影現場で使いこなすにはある程度の知識と経験が要求されます。
その分、一度設定してしまえば、オートで撮影している時のような『モタツキ』はありませんので、(ストロボのチャージが間にあえば)リズムよく撮影をすることが可能です。
また、自分で光量を調整できますので、『もう少し明るく』「もう少し暗く』という調整が簡単にできるのも特徴です。
機材についてもオートの時ほど縛りが無く、マニュアル設定ができるストロボならメーカーに関係なく利用できるのが最大の利点です。(上記の例でいえば、CanonのカメラにNikonのストロボでも撮影できます。)
ただ一点、SONYα6000を使っていた時は、オフカメラシューを使わなければ、他メーカーのクリップオンストロボを使う事が出来ませんでしたので、SONYのカメラだけは注意が必要です。
(α7Ⅱ以降は問題なく使えています。)
デジタルカメラを使っているのであれば、一度撮影をして画像を確認し、明るすぎれば出力を抑え、暗すぎれば出力を上げるだけですので、機能的には難しい事はありません。
マニュアル設定時の注意点
ただ、ストロボの出力を上げ過ぎると(フル発光1/1や1/2等)、チャージ時間が長くなったり、撮影量が多いとストロボの発光管部分が熱くなって使えなくなる事もありますので、通常は1/4以下で使うように調整をした方がいいでしょう。(ご自分のストロボで使い勝手のいい設定を探してみてください。)
一歩進んだクリップオンストロボの使い方
それでは、クリップオンストロボの使い方をもう少し進めてみましょう。
今まではクリップオンストロボをカメラに直接つけて発光していましたが、ここからはカメラから外して、ストロボ単体で発光させていく方法をご紹介します。
クリップオンストロボをカメラから離して使う=オフカメラライティング
(クリップオン)ストロボをカメラから外し、別の場所に置いて発光させることで被写体を照らす方法をオフカメラライティングと言います。オフカメラ=カメラに直付けしていない。という事ですね。
撮影に慣れてくると、ストロボをカメラ本体から離して撮影を行う事が多くなります。
レフ板の代わりにストロボで光を足すとか、光の方向を変えてわざと陰を付けるなど、自分の撮影目的に応じて光をコントロールすることが目的です。
また、レンタルスタジオを使ったことがあれば、定常光を使ったライトスタンドが置かれているのを見たことがあるかもしれません。
クリップオンストロボをカメラから離して使う場合は、光(ライト)とカメラを離して使う点では同じようなものですが、キチンと調光をしなければならないといった点で定常光を使ったライトスタンドでの撮影と少し勝手が変わってきます。
他のサイトや雑誌等では、
- オフカメラストロボ
- オフカメラフラッシュ
- リモートストロボ
等色々な呼び方をしていますが、行うことは『カメラ本体からクリップオンストロボをはずし、独立させた状態で、シャッターを押すタイミングで発光させる』使い方です。
スタジオ撮影を行うプロカメラマンにとっては使えて当たり前のライティングですが、このテクニックを使えるようになると、クリップオンストロボだけではなく、モノブロックやジェネレーター式の大型ストロボを何台も同時に使う多灯ライティングもできるようになってきます。
ストロボをカメラから離して使う理由
ストロボをカメラから離して撮影するのは、『自由に光のコントロールができるようになる』からです。
クリップオンストロボをカメラの上部につけて撮影をすると、被写体の正面からのみ光を発光することになります。
これですと、光の当て方が単調で一方向からのみになり、必ずしも撮影の目的全てに合っているとは言えませんし、背景に影が強く出たりします。
しかしながら、カメラとストロボを離すことができれば、被写体に対して上下左右好きな角度から光を当てる事が出来るようになる上、ストロボにヘッドを付けた場合でもカメラ本体の重さや大きさは変わらないので、撮影の邪魔になることもありません。
ストロボをカメラ本体から外して使う事により、
- 光の当て方(影のつけ方)
- 光の質
- 明るさ
- アイキャッチ
をコントロールすることができるようになります。
カメラの撮影モードとストロボ露光調整の関係
それではストロボをカメラから離して使えばいいかというと、そう単純にはいかないのがストロボ撮影の敷居を上げているようなのですが、基本はシャッターを押すタイミングで発光するようにストロボに信号を送るだけです。
最近では、カメラメーカーやストロボメーカーから専用の機材が発売されていますので、理屈は専門家に任せておいて、自分の撮りたい写真イメージや使いたい環境に合った方法を覚えればいいでしょう。
ストロボの状態 | 自動調光 | 多灯ライティング |
カメラの上 | 〇 | △ トリガーとしても使える |
独立+フラッシュ(トリガー) | × | 〇 |
シューコード利用 | × | × |
無線コマンダー利用(同メーカー) | 〇 | 〇 |
オフカメラライティングの基礎
一番簡単な方法は、シューコード(延長ケーブルみたいなもの)をカメラのホットシュー(クリップオンストロボを載せる所)とクリップオンストロボのシュー接点(カメラに載せていた部位)をつなぐ方法です。
手元で光量の調整ができませんが、基本的な考え方が学べる上、コードの長さが足りればどこでも使う事が出来ますので、クリップオンストロボをカメラ本体から外して使うオフカメラの初歩としてはおススメです。
無線オフカメラライティング
最近では、各カメラメーカー・ストロボメーカーからクリップオンストロボを無線を使ったコマンダーで手元から操作するオフカメラストロボが一般的になってきました。
TTL機能がついている無線ストロボであれば、自動で撮影することが可能ですし、自分が全てマニュアルモードで設定しての撮影も可能です。
違いはカメラの上にクリップオンストロボがついている場合(オンカメラ)とは光の方向性が変わる点です。
オンカメラの時は被写体の正面からの光でしたが、オフカメラの場合は、色々な場所から光を発する事ができ、その分影のつき方も変わります。
無線オフカメラ撮影の注意点
この無線オフカメラストロボは、手元で光量を調整できるので、いちいちストロボの所まで操作しに行く必要が無く、非常に使い勝手が向上しているのですが、電波の状況がよくない撮影場所では、撮影中ストロボが光らない事もあるのが珠に傷です。(100%の確率でストロボが光るわけではないという意味です。)
また一時期、日本の技適マーク無し(日本国内で電波を使う場合、総務省の認可が必要)の外国製コマンダーが出ていましたが、最近では『技適マーク付』として販売されています。(購入時には注意しましょう)
クリップオンストロボで多灯ライティングを行う
クリップオンストロボをカメラから離して(オフカメラ)使える様になると、クリップオンストロボを複数台使った撮影をすることが出来るようになります。
この場合、無線コマンダーとストロボは同じメーカーでないと同調してくれません。
他メーカーのストロボを発光させるだけのレシーバーもありますが、この場合はストロボの設定を変えたい時にストロボの設置場所まで実際に行ってマニュアルで設定をする必要があります。
また、複数の光を扱いますので、バランスと調整が難しくなりますが、一度設定さえしてしまえば、先ほどの無線コマンダーから複数のクリップオンストロボに同調して信号が送れます。
まとめ
慣れないと難しい感のあるクリップオンストロボですが、使いこなすことが出来れば写真の表現を大きく上げる事が可能です。
以前は難しかったオフカメラライティングや多灯ライティングも、クリップオンストロボ本体やオプションの充実で比較的安価で簡単に実現することが出来るようになっていますので、是非この機会に挑戦していただければ嬉しいです。
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