モデルという仕事について

ポートレート撮り方

最初に

 この中の文章は別サイトからの転用となります。
比較的辛口で、一部自分が感じている事と異なる場合もありますが、デメリットな面も含めて的確に業界の現状を伝えていると感じましたので、目指すモデル=将来の方向性を考える際の参考にしてもらえればいいと考えています。
基準としては、この業界で生活をしていく=収入を得る事を目的とした文章です。
このほかに、モデルではなく、タレントや女優を目指す方もいると思います被写体として活動される場合はグラビアモデル系と同じになります。

モデルというのは「他人に見られる」というのが共通点で、それ以外はほとんど何の関係もない複数の職業を「モデル」と呼んでしまっているのが現実で、一口に「モデル」といっても、どのモデルの話をしているのかによって中身は随分違っています。

 

ファッション系モデル

とは言え、モデルといえば一番普通にはファッションモデルですよね。一番の華形はファッションショーに出るショーモデル。一見華やかに見える職業ですが、中身はなかなか大変です。まず、身長がないとなれません。国際的には180cm程度、日本人は背が低いので日本国内だけで仕事をするのなら、もう少し身長は低くてもいいですが、それでも170cmは欲しいところです。これでほとんどの日本人女性はショーモデル失格となります。では、なぜショーモデルは身長が必要なのでしょうか?。ファッションモデルの仕事は服を見せること、です。特にファッションショーのステージで新服をバイヤーやマスコミに披露することは、ファッションモデルの一番の晴れ舞台です。売れっ子デザイナーや有力アパレルメーカーの主催するファッションショーは招待客も多く、広い会場で、隅の方にいる人からステージを見た時に、小さなモデルだと良く見えない。だから大きい方が有利。ガリガリに痩せた、ペチャパイの人が多いけれど、これは痩せた人がゆったりした服を着ることは可能(必要なら服の下に詰物をすれば良い)だが、太った人が細い服を着ることは出来ないからだし、ファッションモデルに美人が多いのは、美人が着ていればショボイ服でも格好良く見えるからです。またショーモデルは手足が長い人が多いが、これは背の高い人には手足の長い人が多いし、見た目も良いからです。それに極端な体型のモデルを使うと消費者である一般の女性がモデルに対して嫉妬心を抱きません。初めから競争を諦めてしまうのです。服を売るためには一般の女性に嫌われないというのは重要なことです。そして一旦、背の高い、手足の長い、痩せたショーモデルというのが定着してしまうと、ファッションデザイナーはそういうモデルを前提に服装のデザインをするようになり、ますます背の低いポッチャリした人がモデルになる道は閉ざされてしまいます。

 

ショーモデル

つまり、ショーモデルというのは、商品の服やファッションショーの都合に振り回されて生きている職業なんです。ショーモデルの職業的特技に早着替えがあります。次のステージまでのわずかな時間に、荷物の運搬やら何やらで男の人も平気で出入りしている楽屋で、紐パンだけの全裸同然の格好で、ササッと着替えが出来なければショーモデルは失格です。ステージ上でのショーモデルが華やかなのは、その方が服を売るのに都合が良いから。それだけ。服を売るのに関係ないことなら、ショーモデルが餓死しそうなほど痩せて生理が止まろうが体を壊そうが知ったことか、というのがファッション業界です。冬物の発表は七月、夏物の発表は一月、それでも暑いとか寒いとかで体調を崩したら、それはモデルの責任、次から仕事がこなくなります。これでもモデルになりたいですか?。背が高くて、手足が長くて、ガリガリに痩せて、若くて、着替えが素早くて、そこそこ美人で、どんなイヤなことがあっても、お腹が空いていても、暑くても、寒くても、ステージに上がった途端に目を輝かせることが出来るなら、なれますよ。
とりあえず、どこかの事務所に登録しましょう。ちゃんとした事務所であれば、どこでも良いです。事務所に登録しても、すぐに仕事が貰えるわけではありません。というか、事務所にはモデルをファッションショーに送り込む力はありません。採用はショーの主催者、つまりデザイナーやアパレルメーカー、時として広告代理店が握っています。大きなショーほどそうです。地方の大型スーパーなどがファッションショーと名乗って展示即売会をする場合があります。そういうファッションショーまがいなら主催者からモデル事務所に一括してモデル派遣の依頼がくることになります。こういう仕事はそのプロダクションに所属していないと取れないわけです。しかし、それ以外の普通のファッションショーはオーディションでモデルを選びます。事務所に出来ることはオーディション情報を逸早くモデルに伝えることと、モデルになるための様々なアドバイスを与えること。今はオーディション雑誌もあるし、インターネットでも色々な情報が手に入ります。それで昔ほどには事務所の役割は重要ではなくなりました。

 

スチールモデル

ショーモデルほど極端な非人間的扱いを受けずに済むのがスチールモデルです。スーパーのチラシなどの写真に収まっているチラシモデルですね。通販のカタログや、最近はオンライン通販で写真だけでなく動画でも活躍してます。ショー会場という制約がないので特別背が高い必要はありません。ピンからキリまであって、場末のスーパーのチラシとかだと経費節減のため従業員やバイトの中からかわいい子を選んで撮影ということもあります。中にはビックリするほどかわいい子がいたりもします。普通のオバサンもいます。体型も特別痩せている必要はありません。一着しか存在しないプロトタイプを着るショーモデルと違って、チラシモデルは既にメーカーに用意されている、あるいは問屋に届いている何着もの中からモデルの体型に合うものを出してきて貰えます。モデルが服に合わせろ、ということにはなりません。こういうモデルだと誰でもなれます。たまたまモデルが必要とされた時に、たまたま居合わせた数人の中で、一番輝いていればモデルになれるのです。たまたま知合いにカメラマンや広告関係者がいて、たまたま声を掛けられた時に、たまたま都合がついて「はい」と返事をすればモデルの仕事ができる。その程度のことです。
でもチラシモデル系の仕事でも大手通販の仕事は誰でも出来るわけではありません。モデルの出来・不出来は売上げに直結します。何人もの候補者の中から何段階もの審査を経て一番消費者に好かれそうなモデルが選ばれるのが普通です。美人でもトゲのある美人は採用されません。普通の身長で、普通の体型で、特別美人でもなく、なんとなく消費者である一般の女性に「好かれそうな」容姿。客観的な採用基準はありません。何段階もの審査をして、最後の決め手は「社長が気に入ったから」とか、そんなことです。とりあえず、どこかのモデル事務所に登録して、運が良ければ仕事が入るし、運が悪ければ仕事はない、それだけです。仕事が入るようになっても、それで安心してはいけません。仕事中の態度が悪かったりして、嫌われたら、それで終わりです。だからといって、仕事中ミスをしないように、嫌われないようにと神経を張りつめていても、今度はそのピリピリした態度が好感度ダウンに繋がって、仕事から遠ざけられるかも知れません。結局のところ、「運が良ければ」、ありのままのあなたを気に入ってくれて、ずっと使い続けてくれるクライアントに巡り会える。そして、そういうクライアントが一社あれば、モデルの仕事を続けることが出来るし、モデルの仕事を続けていれば、また別の出会いがあるかも知れません。でも、運が悪ければ、そもそも最初の一つの仕事にも出会えない。それがチラシ・通販モデルです。
チラシモデルの一種に雑誌モデルというのがあります。ファッション雑誌の経営は広告主であるアパレルメーカーに依存しています。お金を出してファッション雑誌を買うというのは、お金を出してアパレルメーカーのチラシを買っているようなものです。普通のチラシモデルがアパレルメーカーと広告代理店を相手にやっている仕事をアパレルメーカーと雑誌編集部を相手にやるのが雑誌モデルだと思ってください。

 

読者モデル

ショーモデルほど条件は厳しくなく、スチールモデルほど運任せではないのが読者モデル、いわゆる読モです。お気に入りのファッション雑誌に自分の一番の写真を送って、あとは待つ。編集者に気に入って貰えれば読者モデルに採用されるし、雑誌に載って読者に評判が良ければ引き続き読者モデルができる。そんなです。ただし、ファッション雑誌の編集室には山のように読者モデル志望の手紙が届くから、皆さん注目して貰おうと苦労しているようです。プロカメラマンに宣材(売り込み用の写真)を撮って貰うくらいは当り前で、自己紹介の文章も工夫を凝らし、紙や封筒も色やデザインを吟味して、とにかく先ず編集者にちゃんと読んで貰うこと、見て貰うこと、それがなければ気に入って貰う段階に進みません。インターネットなどであれこれ調べたり情報交換したりして、雑誌ごとの傾向と対策を掴んでおきましょう。容姿だけでなく、頭もそれなりに良くないとなれないのが読者モデルです。これだけ苦労をして読者モデルになっても業界では「素人モデル」という扱いになります。

 

グラビア系モデル

ファッションモデルが服を見て貰うためのモデルであるのに対し、グラビアモデルは自分を見て貰う仕事です。服に合わせて何か無理をする必要はありません。特別に背が高い必要も、特別に痩せている必要もありません。可能な範囲で服の方であなたの体型を誤魔化してくれます。ただしそれが良いことかどうかは別問題です。特別の体型を要求されない分、競争は激しくなります。競争に勝ち抜こうと思ったら、いや、そもそも被写体として認めて貰おうと思ったら、それなりの努力と覚悟が必要です。

 

ポートレートモデル

純粋なポートレートモデル、つまり普通に服を着てニッコリ笑っているだけで、仕事として成り立つというのは今では不可能です。なにしろ水着モデル程度なら誰でも応じる時代ですし、子供向けの漫画雑誌でさえグラビアは水着です。専業のポートレートモデルでは仕事になりません。仕事そのものがありません。事務所でも採用しません。写真家のタマゴなどが腕を研くためにポートレートモデルを雇うことはあります。お金にはなりません。自転車のチラシや冷蔵庫のカタログに添え物で写っているモデルはチラシモデルというべきでしょう。アイドルのポートレートは売れます。しかし、これはポートレートモデルというより、アイドルという職業です。結局ポートレートモデルという職業自体成り立ちません。唯一お金を貰えるポートレートモデルは素人カメラマン相手の撮影会モデルです。ファッションモデルのタマゴ、女優のタマゴ、そういう撮られる側も素人で撮る側も素人の撮影ゴッコ、それに金を払う素人カメラマンはいます。どこまでもゴッコ遊びです。こういう撮影会モデルを集めたプロダクションもあります。しかし、そういうところに登録して素人撮影会を何回繰り返しても、それがキャリアとして認められてステップアップに繋がることはありません。

 

水着・下着・セミヌードモデル

水着や下着、セミヌードなら少しは仕事があります。露出が大きいほど仕事は取り易く、お金にもなります。水着モデルなら週刊誌などの素人モデル企画に応募し、運が良ければ選ばれて一回撮影して貰い、幾らかのお小遣いを貰い、週刊誌を読んだ何人かの目に止まり、それで終わりです。下着モデルやセミヌードモデルはもうちょっとエッチな男性週刊誌の企画で一回か二回撮影されて終わり。賞味期間があまりにも短いので、事務所でも登録するメリットはありません。グラビア・アイドルとしての可能性のある特別にかわいい子、オッパイの大きい子だけが事務所に所属できます。18歳未満だとヌード、セミヌードの撮影が有り得ないので水着アイドル要員として事務所が使ってくれます。子供の頃に水着セクシーポーズで名前を売ることに成功すれば、その実績を引っ提げて映画、テレビに女優として進出することも容易です。芸能界にはそういう元美少女が何人もいます。しかし18未満モデルも最近は過当競争で、10代前半でTバックになって一瞬話題にされても二ヶ月もすると忘れ去られる時代になりました。非ヌードモデルの過当競争の中で実際に有名になれるのは本当に少数です。その少数でさえもプロダクション側は常に「いつ脱がすか」を考えています。脱ぐ脱がないは事務所が決めることです。それに対して「ノー」と言えるのはグラビア・アイドル界の頂点に立つ特別に売れている数人だけです。今や「かわいい」「スタイルがいい」は当り前、というかモデルの最低条件で、その上で頭の回転が良くてトークが出来るとか、演技が出来るとか、歌が歌えるとか、何か付加価値がないといけません。

 

美術モデル

ファッションモデルやグラビアモデルと違って美術モデルはモデル事務所に所属しないで活動している人が多いようです。絵画や彫刻のモデルというのは作品の完成までに時間が掛かるので、一度仕事を見付けてしまったら継続してモデルを続けることができます。次の仕事を探して貰うための事務所の必要性というのが他のモデルほど感じられないのでしょう。逆に「一回だけ試しにモデルをしてみたい」では仕事を見付けるのは困難です。また「継続」というのは作品の完成まで何日も掛かるということ以外に、同じポーズを何分も維持しなければならない肉体的苦労もあります。
作家が製作のために雇うモデルは、これは作家自身が採用基準です。全く主観的に決まります。しかし地方都市などでは、なかなか美術モデルを確保するのは難しいようで、特にヌードモデルはなり手がいないので、作家もあまり好き嫌いは言えないようです。しかし作家がモデル探しに苦労しているのと同様、モデルも作家探しに苦労しているのが実状だと思います。カルチャーセンターの絵画教室なども常時モデルを必要としています。美術系大学への進学を目指す人が通う進学塾、予備校なども美術モデルを必要としています。直接問い合わせてみましょう。そういうところで美術モデルをやっていれば口コミで次々と情報が入ってきます。近所の高校の美術部でも「試しに美術モデルをしてみたいから、一度だけ使って欲しい、お金はいらないから」と頼めば使ってくれると思います。デッサンだけなら一回だけのモデルでもOKです。ただし高校だと水着までで、ヌードモデルは出来ないかも知れません。そうやって美術モデルを経験して気に入ったら、継続して雇ってくれる人はいないか、顧問の美術の先生に聞いてみましょう。美術繋がりで近所の芸術家を紹介して貰えるかも知れません。
ちょっと変わった仕事として美術モデルのポーズ集の撮影の仕事というのがあります。これは美術モデルを雇う余裕のない人のために全裸の男性や全裸の女性の各種のポーズを様々な角度から撮影した写真集です。ただしこれは出版社が十年に一遍程度そういう企画を立てた時に、たまたまその場に居合わせた人が引き受けることが出来る仕事です。美術モデルがどういうポーズをするのか不安な人は、大型書店などでこういう本を探して立ち読みしてみると良いでしょう。

 

パーツモデル

手だけ、足だけ、あるいはお尻だけ、そういう人体の一部だけを撮影して貰うモデルがパーツモデルです。手タレ、足タレ、なんて言い方をします。当然その部分だけは誰にも負けない自信が前提になります。ほとんどが広告向けの仕事で、非常に特殊な仕事なので自分でクライアントを見付けようとしても無理でしょう。出来るだけ大きな事務所に登録して仕事を斡旋して貰うことになります。

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